禁煙(by友岡)

数日前に、かなり久し振りに会った或る人と食事をしていたら、その人がふと怪訝(けげん)な顔になって、で、その怪訝そうな視線の先にあったのは空っぽの灰皿でした。


「えっ、先生、煙草やめたんですか?」
「いや、禁煙ていうかなんていうか」
「いつからですか?」
「2007年11月8日木曜の夕方6時から」
「こまかいですね。それにしても、もうそんな前からですか。どうしてですか?」
「いや、まあ、その、ちょっと訳があって」
「まあいいですけど。でも、ちゃんと禁煙できてるなんてすごいじゃないですか。すごいヘビースモーカーだったし」
「うん、まあ。でも、なんせ高校のときからずっと吸ってて、で、禁煙なんてしようと思ったこと一回もないし、したことも一回もないし、ってことは一回も禁煙に失敗したことがないってことだけど」
「なるほど。それにしても、周りの人とか驚いてないですか?」
「いや、人にはあまり言ってなくて。ていうか、あまり人には言いたくなくて」
「どうしてですか?」
「いや、なんかボク的にはカッコ悪いっていうか」
「……」


「それにしても、最初の頃とか大変じゃなかったですか?」
「いや、ぜんぜん。一日に3、4箱以上吸ってたけど、ぜんぜん大丈夫」
「すごいですね」
「でも最近、禁煙に飽きてきて……何か禁煙をやめる切っ掛けが欲しいんだけど」
「……」