ずっと悲しい(by友岡)

ちょうど1年振りに会った人と飲んでいました。


「あれからもう1年か。1年経つのは速いね、なんてベタなこと言いたくないけど」
「年を取ると1年経つが速くなるっていうのもベタですけどね」
「うん。でも、ベタだけど、ホントその通りだよね。子供の頃は1年なんて、永遠、みたいなもんだったし」
「確かに」


「でもまあ、1年が短くなるっていうのとは違うけど、年を取ると、やっぱり時間が気になるよね」
「て、どういう意味でですか?」
「要するに、‘時間の有限性’を意識するようになるっていうか」
「時間の有限性?」
「ボクの場合、‘仕事に優先順位をつけるようになった’っていうことなんだけど」
「優先順位?」
「うん。前は、30代までは、優先順位っていうのをつけなかったのね。
やりたいことが色々あって、例えば書きたいものが色々あって、次は何を書こうかっていうようなときに、あんまり考えないで、次のことに着手してたんだけど、その頃は、時間っていうのは無限にある、みたいな感じだったのね。
だから、どんな順番でやったって別によかったのね。どれから手を着けたって同じってことね。結局は全部できるって感じだから。
それが、40代になって、そうじゃなくなったのね。時間は有限だってことに気がついたのね。
残り時間っていうのを考えるようになって、例えば、生きてる間にあと何冊書けるだろう、って。そうすると、生きてる間にもうX冊くらいしか書けない、ってことで、次はどれを書こうっていうのを真剣に考えて、順番っていうか、優先順位をつけるようになったっていうこと。
これって、とても悲しい、ものすごく悲しいことで、仕事を選ぶようになった、ていうか、選ばなくちゃならなくなったっていうことは。
で、40代になってから、ずっと悲しいわけ」
「なるほど。でも、先生の年、ちゃんと知らないから、その‘ずっと’っていうのが、どのくらいか分かりませんけど」